ローラーコースター3
※ユフィによる日本人虐殺はありませんでした。ですが特区は失敗に終わってます。
※ユフィには日本人虐殺に相当するギアスがかかっており、現在は本国で軟禁状態。
※ユフィが皇位返上していることと、皇帝がギアスに一枚噛んでるとコーネリアが疑っているため、負傷してKMFに乗れない身体になったダールトンが秘密裏にユフィを匿っています。
※コーネリアはギアスを解く方法を探るために単身嚮団を追っていました。
※スザクは本編どおり、ゼロ捕獲の功績でナイトオブセブンになってます。
9 : スザクに知られてしまいました
ルルーシュは枢木神社へ続く長い石段をのぼりきるやいなや、鳥居の先で佇んでいたスザクにおもむろに話を切り出された。
「不老不死になったんだって?」
口調はいたって穏やかだし、表情はとてもにこやかだ。だがなぜか有無を言わせない響きがあった。思わずルルーシュはたじろぐ。そのうえ彼は不幸なことに、気づいてしまった。笑顔を浮かべているはずのスザクの目が、まったく笑っていないということに。背筋に冷たいものが走る。
「一体誰からその話をっ……いや、その前に、今日はナナリーの件で、」
勢い任せに本来の用件を口にしようとするが、銃を突きつけられたために言葉はそこで途切れた。
「質問に答えないのなら今この場で君の頭を撃ち抜いてみてもいいんだけど……」
脅しとも取れる言葉を笑顔で告げるスザクの目は、やはり笑っていなかった。
「質問に答える気になった?」
銃弾で頭を撃ち抜かれようと死ぬことがないのはルルーシュ自身よく分かっていることだが、反射的につい頷いてしまう。決してこの元友人が怖いからではないと自分に言い訳をするが、よく見るとその身体は小刻みに震えていた。
「ルルーシュ、君は本当に不老不死になったのか?」
笑顔を取り払い真顔で尋ねてくるスザクに、おずおずと頷き返す。もはやルルーシュは目も合わせられない。
「何があろうと絶対に死なない?」
一拍間を置いてから、こくりと頷く。
「脳や心臓に致命傷を負っても?」
さらに一拍間を置いて、こくりと頷く。
「へえ、いくら嬲り殺しても生き返るんだね?」
こく――と頷きかけていたルルーシュの動きがそこでぴたりと止まった。
10 : 異星人と対面している気分です
「遠慮はいらないってわけだ」
うんうんと嬉しそうにひとり納得するスザクを前にして、ルルーシュは途方に暮れる。同じ言語で話している筈なのに、彼が何を言っているのかルルーシュには理解できない。それでも恐怖だけは間近に感じられて、無意識に身体が逃げを打つ。
「ところで痛覚まではなくなってないよね?」
だがそれに気づいたスザクに笑顔で銃の照準を太腿に向けられ、逃亡は失敗に終わった。引き金に掛かった指の動きを見て、ルルーシュは慌てて質問に答える。
「いっ、以前より少し鈍くなったようだが、痛覚は消えていない」
声震えてるよと可笑しそうに笑うスザクが恐ろしくてたまらない。さっきまでの上っ面だけの笑顔と違って、心底楽しそうな表情だからこそ、余計に恐ろしいのだ。
「そうか、良かった。やっぱり反応がないとつまらないしね」
何が?!――とは、もちろん怖くて訊けなかった。
11 : これってホラー映画でしたっけ
「言葉で言ってもだめなときは、身体に言い聞かせるしかないと思うんだ」
そもそも再会してからのお前とは腹を割って話したことなんて一度もないじゃないか!――とルルーシュは反論したくてしょうがないのだが、相手の不興を買ってしまえば即座に空中回し蹴りをくらいそうで何も言えない。受身を取れたとしても、そのまま押さえ込まれてスザク曰くの「嬲り殺し」の目に合うだけだろうから、事前に回避できるものは回避するに限る。
「たださ、いくら君が意外と打たれ強くても限界があるだろう?」
問いかけながらスザクが短い歩幅で歩み寄ってくるものだから、ルルーシュの肩がびくりと跳ねた。咄嗟にうしろへ下がるが、背後にあるのは先ほど思い出に浸りながらのぼってきた石段である。いや、たとえ背後に広大な大地が広がっていたとしても、身体能力の差ゆえ、追いつかれるのは目に見えている。それよりも、逃げ出そうとした瞬間に足を撃たれるのがオチだろう。
――じゃあ、どうすればいい?
そうして戸惑っている間にもじりじりと距離を詰められ、ついに腕を伸ばせば十分に手の届くところまで追い詰められてしまった。必死に平然を装っていた表情も崩れ落ちる。わなわなと身体が恐怖で震えた。
「でもこれで問題はすべて解決したね」
パアっと晴れやかな笑みを浮かべたスザクが手を伸ばしてきた。
もはやなすすべなし。
「ひっ」と短い悲鳴が飛び出る。
だがあと少しで首に手が届くというところで、なぜかスザクの動きがぴたりと止まった。
「…………あ、え?」
予想外の事態に間抜けな声が漏れる。しかし目の前のスザクは動きを止めたまま何の反応も返さない。
「黙って見ていればよくも勝手なことを……」
展開に思考が追いつけないでいると、境内に第三者の声が響いた。