キューピッドの日事件 1
ミレイが卒業記念イベントを高らかに宣言してからのち、講堂で改めて開かれた全校集会の場で、その名も「キューピッドの日」というイベントの内容が発表された。ミレイ生徒会長最後の主催イベントだけあって、帽子を交換し合えばカップル成立という、ごくシンプルではあるがこれまで以上にめちゃくちゃである。
にわかに気色ばみ意中の相手の帽子奪取に燃える生徒ばかりのなかで、ルルーシュはただひとり胃をきりきりと痛ませていた。
咲世子の組んだ強行タイムスケジュールに沿って中華連邦から帰還したのがおよそ20分前。蓄積してゆく疲労を回復させる暇は1分たりとてない。そこに来てこのイベントである。C.C.に真面目な顔で「おまえの死因は過労だな」と言われたが、確かに今立っているのが不思議なほどにルルーシュの過密スケジュールぶりはひどいものだ。イレギュラーな出来事がひとつでも起こればおそらくぶっ倒れるだろうと、口には出さないがヴィレッタも心配している。
何もそこまで頑張らなくてもいいではないかと言うことすら憚るくらいに、ルルーシュのここ数日の頑張りようはすごかった。ボロが出てはいけないと常に気を張り、限界を超えているであろう身体は気力だけでもっていた。
ぎりぎりの状態だ。
本当にぎりぎりなのだ。
それなのに――
「あ、それと最後にひとつ。今回は兄弟姉妹の血縁関係のある人間同士の帽子交換は無効にします! そういうわけだからルルちゃん、弟に逃げるのはナシね」
気力の糸は、ミレイの手によって無残にもぷちっと切られてしまった。