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参加表明!        / ジノ→ルルーシュ?



「なあなあ、そのカップル強制ってさ、同性同士でも成立すんの?」

「え?」
突然のジノの一言に、激震が走った。周りが騒然となるなか、発言元のジノと、イベント発案者のミレイはまるで明日の天気の話でもしているかのように普段の調子で会話を続ける。

「考えてなかったけど、そうね、面白そう」
「だろ?」
「んんー、ただこの帽子、男子生徒は青で女子生徒はピンクって大雑把に色わけしているだけだから、同性で交換してもそれと分からないのよねえ」
「いっそ全部に名前刺繍するとか」
「あ、それいいかも」
「じゃあ同性カップル成立もアリ?」

遠目でも分かるほど、ミレイは大きく頷く。そしてふたりの視線がルルーシュへと注がれた。
しかし当の本人はこれまでの話を頭のなかで反芻するので精一杯で、その場にいる大多数の人間が自分を狙って視線を定めていることにまったく気づいていない。
ジノが一層笑みを深めてルルーシュに近寄り、ぽんと肩に手を置いて「覚悟しろルルーシュ先輩!」と弾んだ声で言ってきても、「え? あ、ああ……?」と首を捻るだけだった。


2008.06.29  Yu.Mishima





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作戦会議?      / ロロ→ルルーシュ


「え……? それで結局同性でも強制カップルは成立することになっちゃったの……?」

わなわなと身体を震わせて尋ねてくるロロに内心首を傾げながらもルルーシュは「ああ」と答えた。

「だからナイトオブスリーも兄さん狙いと公言を……?」
「ん? ああ、彼も会長の悪ノリに律儀に付き合うつもりなんだろうな。まったくラウンズも暇人の集まりなのか? あれでスリーとシックスなんて、数字を間違えているとしか」
「兄さん」
「なんだ?」
「ラウンズもそうだけど、絶対当日は全力で逃げてね」
「当たり前だろう。そしてこの機会に咲世子が築いた女性関係はすべて清算する」
「そうだけど、そうじゃなくて、男にも気をつけて」
「大丈夫だろう男は。会長とジノ・ヴァインベルグの悪ノリで付加した項目だ。誰も本気で俺を狙うやつなんていないだろう」

ああ、でも日頃の憂さを晴らそうとして狙ってくるやつはいるかもなと付け加える。

「そうか。早々に男と交換してしまえばいいか。そうしたら角も立たない」
「ルルーシュ、それ本気で言っているのか……?」

信じられないとばかりにヴィレッタは問う。だがルルーシュはなぜそんな質問をと不思議そうにしつつも、「本気だが」と返した。がくりと肩を落とすと、ロロが「兄さん!」と声を荒げる。そうだお前も言ってやれと顔をあげたが、続く言葉にヴィレッタはまたしても肩を落とすのだった。

「それなら交換する相手は僕でもいいよね!?」
「ああ、確かに弟であるお前が相手としては最適だな」
「でしょう?」

不機嫌だったはずのロロの表情がみるみる嬉しさで満ちてゆく。
このかんまったく表情を変えなかった咲世子を見て、ヴィレッタは密かに彼女に尊敬の念を抱いた。


2008.06.29  Yu.Mishima





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彼女の秘めやかなる恋の決着      / ミレイ→ルルーシュ


(敗因は、私が自分の足で走り出さなかったことね)
照れていじけたような表情のルルーシュとシャーリーを人垣のなかから見つけて、ミレイはふっと微笑を浮かべた。
(自分にけじめをつけたかっただけだから、って言うと言い訳にしか聞こえないけど)
イベントに乗じてルルーシュに本気の告白をしたところで、結果は知れている。だから様子のおかしかったルルーシュとシャーリーの関係修復に役立てられたほうが、イベントをした甲斐もあるということだ。
(よかった)
あとは単位授与式を残すだけで、晴れてミレイはこの学園を卒業する。
(でも私がシャーリーのように、自分の足で走ってがむしゃらに追いかけていたらどんな結果になっていたのかしら)
少しだけ未練を残していくのは、次なるステップを軽やかにのぼるため。


2008.06.29  Yu.Mishima





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ふたりの邪魔はしないでください      / アーニャ→ルルーシュ


(ルルーシュ、くん)
襲い掛かる虫取り網をひょいと避けながら、アーニャはルルーシュを探していた。写真のことを聞きたくて話しかけようとするのだが、常に誰かの邪魔が入ってろくに話が出来ないでいた。彼の弟を含め何人かは携帯を掲げることで撃退できたのだが――暗に、このなかの写真データをネットに晒すぞという脅しである――それでも包囲網を突破できない。さらに味方であるはずのジノが先陣を切って邪魔してくるのだから、ルルーシュとふたりきりで会話なんてもってのほか。
(カップルになれば、誰も邪魔できない)
というか、させない。
カップルという大義名分が立てば近づく人間すべてを追っ払えるとアーニャは考えた。だから何が何でもルルーシュの帽子を奪わねばならない。そしてみんなに自分たちが何人も侵してはならないカップルであると認めさせるのだ。
飛び掛ってくる男子生徒をひらりとかわすと、アーニャはモルドレッドの元へと急いだ。


2008.06.29  Yu.Mishima





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幕引きの銃弾      / ルルーシュ+シャーリー


シャーリーの微弱な呼吸にあわせて、傷口からあたたかな血液が溢れ出る。どんどん床に広がる。その場に膝をついたルルーシュの服は少女の血を吸い上げ、その色を濃くした。
血は止まらない。
(シャーリー……!)
過去の記憶がよみがえる。全身に弾丸を浴び、蜂の巣になった母の姿。なぜ自分が撃たれたのか分からず不思議そうな顔をしていたユーフェミアの姿。
そして今ひとりの少女が一発の銃弾に見舞われ、儚い命をひっそりと終えようとしている。

「死ぬな! シャーリー!」

なぜ。なんで。自分が大事だと思った人間はみんな、この道を辿るのだ。

覚悟を持ってユーフェミアを撃ったときとは違い、覚悟もなにも持ち合わせずに突然の凶行に対面したルルーシュの口から、8年前と同じ絶叫がこぼれた。


2008.07.07  Yu.Mishima





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じゃあね、またね、      / シャーリー→ルルーシュ


徐々に耳が聞こえなくなり、視界が暗くなっていっても、シャーリーは恐れを感じなかった。最後に見たルルーシュの顔が涙でぐしゃぐしゃになっていたのは悲しかったけれど。シャーリーの好きなあの笑顔を見せてほしかったけれど。会えただけで、自分の言葉を伝えることができただけで、それだけで満足だった。
目を瞑るのは怖くない。
だって再びルルーシュと出会えたとき、シャーリーは絶対に彼のことを好きになる自信があったから。何度だって好きになる。終わることのない恋だ。ここで終わることはないのだ。

次に目を開けたらきっと、会える。

(先に、行くね、待ってるね、ルル)

目を瞑るのは、怖くない。


2008.07.07  Yu.Mishima





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安息      / ロロ→ルルーシュ


バベルタワーで兄が自分を庇ったために奈落へと落下していったとき、咄嗟に伸ばした手が彼に届かなかったことをロロはずっと後悔していた。自分が生きるためではなく、命令されたからでもなく、ただ純粋に気持ちに従って行動したのはおそらくあのときが初めてだろう。それなのに兄を救えなかった。その事実がいつまでもロロを苦しめていた。いつだって兄であるルルーシュはロロを救って、守って、与え続けてきてくれていたのに、自分はまだ何ひとつ返せていない。大嫌いだと言われようと、殺すつもりだったと言われようと、ロロの胸のなかには彼から貰ったものがいっぱいに詰まっている。周りが何と言おうと、ルルーシュ本人が否定しようと、それは確かなことだった。

(だから――)

たとえルルーシュが拒んでも、ロロは絶対に彼を守るのだと固く誓い、早々とそれを実行に移した。

斑鳩から脱出し、追跡を逃れ、ルルーシュを守り通した。以前届かなかった手は、今度こそしっかり繋がれたのだ。
自分の命を燃やす価値はあった。だって胸の中身はすべて兄から与えられたものだから。それを返しただけのこと。

――自分の意思を貫き通せた。
――大切な兄を守りきることができた。
――嫌いという言葉は嘘だったと言ってくれた。
――自分たちは兄弟だと、言ってくれた。

(よかった、よかった……よかった)

そうしてロロは満足感に包まれて静かな眠りについた。


2008.08.18  Yu.Mishima





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涙      / ルルーシュ→ロロ


たった今目の前で息を引き取ったロロの亡骸を、ルルーシュはそっとコクピットから下ろした。身体はまだ温かく、安らかな死に顔はともすれば寝顔のようで、心臓が止まっているだなんて嘘のようだった。だがロロが息絶えたことは紛れもない事実で、彼が目を覚ますことは二度とない。

(ロロ……)

涙は出なかった。

(涙を流さないなんて、薄情なやつだとお前は怒るかな? でも、母が亡くなったとき俺は泣かなかった。ナナリーがフレイヤに巻き込まれたが、いまだに涙は出ない)

幼さの残る弟の額をルルーシュは優しく撫でる。

(つまりロロ、お前はこっち側の人間だということだよ)


2008.08.18  Yu.Mishima





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ボン・ボヤージュ      / ロロ→ルルーシュ


兄さんはひどいことを言う。

「おまえはもっと視野を広げなければだめだ」

なんで?
必要性が感じられなくて端的に疑問を返すと、兄さんは困ったように笑って僕と目を合わせる。

「もっと色んな人と出会って、繋がりを持って、世界を広げろ、ロロ」
だから、なんで?

僕は今のままで十分なのに。兄さんとの繋がりだけがあればそれで良いのに。それではいけないの?

「おまえの好意は純粋に嬉しいと思うよ。でも、今のおまえには俺しかいないじゃないか。選択肢がひとつしかない。それよりは、知り合えたたくさんの人のなかから俺を選んでくれたほうが嬉しいんだ……もちろん、そのなかから別の人を選ぶという道もある」

そんなことはありえないよ!
思わずカっと声を荒げると、兄さんは一瞬目を丸くして、寂しそうに微笑んだ。

「ロロ、世界は俺だけじゃないぞ。色んなものに目を向けてみろ」

兄さんはひどいことを言う。
優しい兄の顔をして、やんわり僕の幸せを否定するんだ。


2008.08.25  Yu.Mishima





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僕にあずけて      / スザク→ルルーシュ


「君が僕を頼りさえすれば即解決、すべて丸く収まるのに」

深くため息をつくスザクにルルーシュはしかめ面を向けてくる。

「ナナリーのことで頼ったじゃないか」

結果はああだったけどなという呟きをスザクは聞いていなかったのか、そうじゃなくてと不満を少しも隠していない声で返した。

「ナナリーのこと抜きで、僕を頼ってほしいんだよ」
「なにを言っているんだ?」

ルルーシュは眉をひそめてありえないとばかりに言い放ってきた。その言葉にスザクは「やっぱり……」と肩を落とす。
ナナリーのためなら幾らでも膝を折るくせに、こと自分の事に関しては絶対に人に頼らないルルーシュ。項垂れているスザクは彼の馬鹿高い矜持をどうやったらへし折れるのか、そればかり考えていた。

(全体重かけるくらいの勢いで、僕に寄りかかってきてほしいのに)


2008.08.25  Yu.Mishima


2008.06.29-08.25 Yu.Mishima