ある機密情報局員の私見と至言・その後
ある機密情報局員の私見と至言・当夜 / ランペルージ姉弟
不機嫌そうに眉を寄せている弟の顔を見て、ルルーシュは心配そうに声を掛けた。
「どうしたんだロロ、眉間の皺」
「実はヴィレッタ先生に、おまえたち姉弟はくっつきすぎだって言われて……」
ロロにまでそんなことを言っていたのかとルルーシュも思わず顔を顰めそうになるが、はたとあることに気づいた。確かにロロと自分は姉弟であるが、もう高校生である。ロロの情操教育上、過度なスキンシップは毒にしかならないかもしれない。
口元に手を当てながらそんなことを考えていたら、「姉さん……」と遠慮がちな声で呼びかけられた。視線を向けると、間近に寂しそうに瞳を曇らせた弟の顔がある。
「やっぱり他の人から見て、僕たちって変なのかな? もう、一緒に寝るのもやめたほうがいい? 僕は平気だけど、姉さんが他人から変な目で見られるのは嫌だから……」
そう言いながらも縋るように自分を見つめてくる弟に、ルルーシュは感極まった。細い身体をぎゅっと抱きしめて、そんなことは気にするなと声をかける。
(ロロは俺よりも両親と接した時間が短い。貰えるべき愛情は当然、年齢差上俺よりも少なかった。その分俺が弟を愛さないでどうする!)
そう結論に至った彼女の取るべき行動は決まっていた。
「よし、今日は一緒に寝よう。ロロ、寝支度が出来たら俺の部屋へおいで」
「……うん!」
弟の硬い表情が解けていく様子を見て、ルルーシュもまた満足そうに微笑むのだった。
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ある機密情報局員の私見と至言・翌日 / ヴィレッタ+ロロ
「ロロ・ランペルージ……一緒に寝るのを止めないならせめて、夏の間だけは慎むようにしろ」
ヴィレッタはげっそりしながらも、くだんの少年にそれを伝えた。注意した当日にさっそく姉と一緒に寝ている監視映像を見て、なにかを諦めたらしい。
だが夏場はだめだ。
ただでさえ密着度が高いというのに、夏は薄着になる。
ルルーシュ・ランペルージは性に対し疎く、淡白な性格であるからそういうことに気が回らなさそうだが、男であるロロなら自分の意を酌んでくれるだろうと思い、その旨を伝えた次第である。簡単に同意を得ることは難しいと、昨日の件を踏まえてヴィレッタは判断したが、これだけは譲れなかった。
来るべき反論に備えて両足に力を入れる。しかし案に違って返ってきたのは「そうですね」という答えだった。
(ロロ、やっと分かってくれたか……!)
思わずほっと表情を崩すが、続く言葉にヴィレッタは再び顔を強張らせる結果になる。
「さすがにエリア11の夏は暑いですから、寝苦しいですよね」
(違う! 私が言いたいことはそういうことじゃない!)
2008.05.24 Yu.Mishima