悲しい話はもうたくさん! 2
06 C.C.とマリアンヌ/turn14、皇暦1997シーン撮影終了後
「お疲れ様でした」
「カメラの前に立つのはいまだに慣れないわ……唯一の救いは、今のところ台詞がないこと」
困ったようにはにかむマリアンヌの本業は特殊メイク技師である。この作品でもC.C.の胸元の傷やブリタニア皇帝、咲世子の変装ルルーシュのメイクなどで参加している。
「父もひどいわよね、ルルーシュと顔が似ているというだけで裏方の私まで舞台のうえにひっぱり上げてしまうんだもの」
「畑違いの私も駆り出されましたし」
「あら、それはあなたが監督の眼鏡にかなったからだわ。ここに居るのはあなたに実力があるからよ。謙遜してはだめ」
にっこりと微笑まれて、C.C.は思わずうっと詰まる。悠然とした微笑は慈愛に満ちていて、見えるはずのない後光が差しているかのように見えた。ロイヤルと称すよりも、もはや神の域に近い。様々な仏像やイコンがC.C.の脳内を駆け巡る。
マリアンヌの起用理由はルルーシュと顔が似ているからと本人は言うが、絶対にそれだけではないと確信した。
------------------------------------------------------------------------------
マリアンヌさん(年齢不詳)はユフィルル双子のお姉さんで、皇帝の長女です。高校生くらいまでは女優志望でしたが、その後転身。特殊メイクの腕は、海外でも賞を取ったことがあるほど。色々と謎に包まれたお方で、弟妹たちすら正確な年齢を知りません。「女なんてメイク次第で何歳にでもなれるのよ」マリアンヌ談。
C.C.(23)は歌姫です。一度だけドラマに本人役で特別出演したことがありますが、本格的に演技するのはギアスが初めて。ちなみにC.C.は役名ですが、共演者にはC.C.呼びされています。彼女自身、C.C.という役を気に入っているのでむしろ推奨してます。
07 C.C.とルルーシュ/turn15ラストシーン撮影終了後
「ご主人さま、今日このあとのご予定は?」
「……やめてください、その口調」
「少しくらい役作りに付き合おうという気はないのかルルーシュ。薄情なやつめ」
ルルーシュの拒絶の言葉を聞くや、途端にC.C.は態度をころりと変えた。
普段の言葉遣いなどに影響を受けるほど、魔女・C.C.に馴染んでいた彼女は、幼児返りした少女とルルーシュの対面シーンでNGを連発している。カットを重ねること十数回。ようやく監督の要求に応えられたときにはふたりともへとへとになっていた。
ドラマ出演決定以来演技のレッスンを毎週受けるようになったとは言え、彼女の本業は歌手だ。他の俳優に比べ圧倒的に演技に携わる時間が少ない。
だからこそ収録終わりのルルーシュを捕まえたのだが、C.C.の思った以上に反応が悪い。
どうしたのかと訊ねると、ルルーシュの顔が泣き出しそうにくしゃっと歪んだ。
「だって……」
C.C.は思わずぎょっとして立ち止まった。見る見るうちにルルーシュの目には涙がたまってゆく。
「だって、せっかく第1シーズンのときからここまで、ずっと一緒にがんばってきたのに、カメラの回っていないところでまで余所余所しい態度を取られたら……」
オープニングのナレーションも、次から俺になるって監督に言われたし。
ついにルルーシュの目から一粒涙が零れ落ちる。
C.C.が慌てて宥めにかかったのは言うまでもない。
------------------------------------------------------------------------------
もちろん、このあとふたりで特訓です。ルルーシュの自宅にはスタジオ(レッスン場?)があるので、そこにて。ルルーシュは実家暮らし、マリアンヌは家を出て一人暮らし、ユフィはマンションと自宅を行ったり来たり。
シャルル宅のイメージは、「天然パールピンク」の乾家です。ちなみにブリタニア一族は、シャルルの実兄が経営しているプロダクションに皆所属しています。社長息子がシュナイゼルとクロヴィス。シュナイゼルも経営に携わっていて、そのうち表舞台から引っ込む予定。クロヴィスは本来舞台美術家。演技なんて無理です出来ませんと喚いていたのですが、早々に出番が終わってしまい、それはそれでしょんぼり。ですが第2シーズンに入ってからも、スタッフのひとりとして参加しています。
08 カレンとスザク/turn16撮影終了後
「痛い……」
「そりゃあ本気でやらせていただきましたから」
恨みがましく睨んでくるスザクに、カレンは「あーすっきりした」と吐き捨てる。
「これでも一応顔が資本なんですけど」
「監督に本気でやれと言われましたからね。それに、あんたの異常な回復力なら明日には元通りでしょ」
「拳に私怨がこもってた」
「否定はしないわ」
もちろん、次のロケはルルーシュと一緒になるんでしょ羨ましいのよこの野郎という恨みである。
そう言ったらスザクが勝ち誇ったように笑うものだから、カレンはその足を思い切り踏みつけた。
------------------------------------------------------------------------------
清々しいほど、ふたりは男の友情的なものを育んでます。付き合っているのではないかとゴシップ記事を書かれたことがありますが、現場のふたりを知る人間には一笑に付されました。ですが、ルルーシュは真に受けて、スザクとカレンは付き合っていると一時期信じ込んでいました。
09 コーネリアとカリーヌ/turn16撮影終了後
「お姉ちゃん、今日ルルーシュさんと撮影一緒だったんでしょ?」
ああとコーネリアが肯定する前にカリーヌは「いいなー」と羨ましそうに口を尖らせて不満を訴える。第2シーズンから参加しているカリーヌは役の都合上ルルーシュと一緒になる機会がない。
「私がルルーシュさんと最後に会ったのなんて元旦だよ?」
お姉ちゃんずるい!と抱きついてこようとする妹を軽くいなすと、コーネリアはため息混じりに「訴える相手が違うだろう」と言った。
「監督に直訴したらどうだ?」
「……実の子にも容赦ないおじさんが、私なんか相手にしてくれると思う?」
それもそうだな、なら諦めろとあっさり言い放つコーネリアに、カリーヌは「お姉ちゃん冷たーい!」と叫びながら再び突撃を試みた。
------------------------------------------------------------------------------
コーネリア(28)とカリーヌ(14)は姉妹です。コーネリアは主に舞台で活躍中の女優。カリーヌは13歳のときにデビューしたアイドル歌手で、ナナリーをライバル視してます。ルルーシュが芸能界デビューする前までは「お兄ちゃん」呼びしてましたが、ナナリーがルルーシュを「お兄さま」呼びするようになってから「ルルーシュさん」と呼ぶように。
親戚で集まった際など、いとこのなかでルルーシュよりも年下なのはカリーヌだけだったため(ナナリーは仕事のために常に欠席)、年下を甘やかしたいルルーシュに構われていました。そんなわけでカリーヌはいとこのなかでルルーシュのことが一番好きなんですが、共演がきっかけでナナリーもルルーシュに懐いてしまったためにライバル心を燃やしているのです。
あまり会うことはありませんが、カリーヌとナナリーはお互いけんか友達のような感覚を持ってます。
10 生徒会メンバー/SEならぬAE2「裸の―」撮影前
「ロロってばルルちゃんにべったりね〜」
からかうように言ったのはミレイだ。
「だって、最近全然兄さんと現場で一緒になれなくて……」
真面目に返すロロと、苦笑しつつも彼の好きなようにさせているルルーシュ。
「さみしかった?」
「はい」
やりとりの間もぴったりくっついている男ふたりをどことなく羨ましげに見ているのはシャーリーである。
(ここのところずっとひとりで撮影だった俺の目の前でそれを言う?!)
喉まで出掛かった言葉を必死に飲み込んだのはリヴァルだった。
------------------------------------------------------------------------------
ミレイさん(23)はマルチタレントで実際に気象予報士の資格を持っていたり。リヴァル(19)は5人組アイドルユニットのメンバーで、主にMCやトーク担当。ルルーシュとは同い年ということもあって結構仲良しです。
2008.07.30-8.31 Yu.Mishima